10月15日 中井貴恵さん
今日の日経夕刊掲載「あすへの話題」は俳優中井貴恵さんの担当。私は彼女がどんな映画に出て今何をしているのかとんと知らないのだが、彼女の文章を読む度にこんな風に書けたらいいなと思います。まずテーマがはっきりしており、洗練された言葉使いで文章がゆったり流れています。6歳の時に亡くした父(佐多啓二)と会うのはいつも映画の中。映画を通して父と会い父を知った。そして5年前父の死から52年が経ち母が亡くなった。母の納骨の日初めて父の骨壺を目にした。そこにいたのは映画館で何度も見た佐多啓二ではなく父、中井寛一だった。父の骨壺の横に真新しい母の骨壺が置かれた。父が亡くなってからどんなところよりも来たかったに違いない場所。寄り添うように並んだ二つの骨壺を見て自分の人生の役割の大半を果たしたような気持になった。手を合わせ再び目を開けるとお墓の窓はもうすでに閉じられていた。状況が目に浮かび彼女の感情が溢れています。