10月20日 キリギリス
朝晩めっきり涼しくなり帰宅時には虫の声が聞こえてきます。私は虫はあまり好きではないのでその種類もよく知らないのですが「キリギリス」というと思い出すのが芭蕉の「むざんやな甲の下のきりぎりす」です。奥の細道も後半石川県の小松多太神社に祀ってある齋藤実盛の兜と錦の直垂の切れ端を見たときに詠んだ句ですね。私は熊谷に行った時この地で善政を施し崇めらえていた熊谷実盛が開いたという妻沼聖天山にある碑で初めて彼のことを知りました。謡曲「実盛」などで知るぞ知る話のようですが実盛は幼少時にその命を救った木曽義仲と加賀篠原の合戦で老骨を隠すため白髪を黒く染め平家方として戦い討ち死にした。その首級から実盛だと分かった義仲が多太神社に兜などを奉納したのですね。そういった歴史的背景を芭蕉は当然心得ており兜の下に見つけたキリギリス(今のこおろぎ)に実盛を思い浮かべたのですがほんの17文字の中に生きる情景ですね。