6月24日 沖縄慰霊の日「平和の詩」

「懐中電灯を消してください」/一つ、また一つ光が消えていく/真っ暗になったその場所は/まだ昼間だというのに/あまりにも暗い/少し湿った空気を感じながら/私はあの時を想像する あなたがまだ一人で歩けなかったあの時/あなたの兄は人を殺すことを習った/あなたの姉は学校へ行けなくなった あなたが走れるようになったあの時/あなたが駆け回るはずだった野原は/真っ赤っか 友だちなんて誰もいない あなたが青春を奪われたあの時/あなたはもうボロボロ/家族もいない 食べ物もない/ただ真っ暗なこの壕(ごう)の中で/あなたの見た光は、幻となって消えた。「はい、ではつけていいですよ」/一つ、また一つ光が増えていく/照らされたその場所は/もう真っ暗ではないというのに/あまりにも暗い/体中にじんわりとかく汗を感じながら/私はあの時を想像する あなたが声を上げて泣かなかったあの時/あなたの母はあなたを殺さずに済んだ/あなたは生き延びた あなたが少女に白旗を持たせたあの時/彼女は真っ直(す)ぐに旗を揚げた/少女は助かった ありがとう あなたがあの時/あの人を助けてくれたおかげで/私は今 ここにいる あなたがあの時/前を見続けてくれたおかげで/この島は今 ここにある あなたがあの時/勇気を振り絞って語ってくれたおかげで/私たちは 知った/永遠に解かれることのない戦争の呪いを/決して失われてはいけない平和の尊さを ありがとう 「頭、気をつけてね」/外の光が私を包む/真っ暗闇のあの中で/あなたが見つめた希望の光/私は消さない 消させない/梅雨晴れの午後の光を感じながら/私は平和な世界を創造する あなたがあの時/私を見つめたまっすぐな視線/未来に向けた穏やかな横顔を/私は忘れない/平和を求める仲間として  (首里高校 高良朱香音)