1月25日 営業担当者の雑記
今日の日経夕刊「プロムナード」という欄に「世界から彼が消えたなら」という題で川村元気という作家が小文を書いていました。大学生のとき叔父が亡くなった。脳腫瘍。四十七歳の若さだった。と始まりその叔父から小学生の時ドライブに誘われ突然車の運転をしないかと言われた。「お母さんには内緒だはで。男の約束だきゃ」。叔父が倒れた時なぜかその秘密のドライブを思い出した。亡くなる前「わ、お前のことが好きだ でもお前は、わのことを忘れるんだべな」そんなことはないと僕は言ったが「いや、みんながわのことを忘れる。この世界はわがいなくなっても、なんの変りもなく明日を迎えるんだ」何も言い返せなかった。それから10年。「世界から猫が消えたなら」という小説を書いた。脳腫瘍で余命わずかと宣告された男が、一日の引き換えに、世界からひとつずつ物を消していく。書きながら叔父がいた世界といなくなった世界に存在するほんの小さな差、それこそが彼のいた意味なのだと証明したかった。しゃれた短編小説を読んでいるようでした。