5月9日 営業担当者の雑記
日曜日の日経文化欄に「熊本の俳人漱石」という表題で俳人 坪内稔典氏が寄稿されていました。内容は第五高等学校に赴任する為熊本に来た漱石が作った900余りの俳句を鑑賞しているものです。冒頭に「駄馬つづく阿蘇街道の若葉かな」といかにも初夏の風景を表わした句から始まり俳句の鑑賞の仕方などにも言及しており中々面白いものです。その中で「津嘯去って後すさまじや五月雨」というのが出てきます。1896年6月三陸大地震が発生し三十メートル近い大津波が沿岸を襲った時のことを漱石が読んだ句です。二万人を超す死者が出たとのことで漱石もただただ「すさまじ」としか言えないほどの驚愕だったのでしょう。坪内氏はその大地震から120年、かつて漱石がいた熊本にまた大地震が起きてしまったと書きます。天災は予測していない頃に突然やってきて自然をそしてその中に暮らしている人たちを徹底的に痛めつけます。「秋の川真白な石を拾ひけり」と詠んだ川は「草山に馬放しけり秋の空」と吟じた山々は無残な姿になってしまったのでしょうか。