4月12日 営業担当者の雑記
今日4月12日は私の好きな歌人のひとり窪田空穂の命日です。彼の作品は派手でも劇的でもありませんがその飾らない、自分の心に忠実な歌はじんわりと浸みてきます。若い時には次々に子供をそして最愛の妻をも病気で亡くしてしまいます。その時の歌は電車の中では読めないものばかりです。「今ははや現なき子が顔まもり涙ながして何いふや妻」そしてその妻をも亡くした時は「人呼ぶと妻が名呼べり幾度をかかる過ちするらむ我れは」と慟哭しています。さらにさらに関東大震災の時の一首「死ねる子を箱にをさめて親の名をねんごろに書きて路に棄ててあり」です。その情景は手に取るように視えます。無念この上ない親のせめてもの供養、心の葛藤までが分かります。多分その場での作ではなく家に帰ってあるいは心の整理が出来てからの作だとは思いますがこんなに哀しい表現がよくできるものだなと芯の強さなのか作歌意欲なのか、感心してしまいます。晩年になっても決して老成せずいつも己を見つめ続けていた空穂でした。