チューニング 2024年11月24日

 家で淹れるお茶はいつも玄米茶と決まっている。実家も玄米茶だった。なぜうちは玄米茶なのか。思い当たることがある▼私は2歳ごろから小学2年生まで、ネフローゼ症候群という腎臓の病気で入退院を繰り返していた。治療にステロイド剤を使うので、この病気で入院している子どもたちは、副作用でみんな太っていて、顔はパンパンに腫れあがったムーンフェイスをしていた。私は治療のため1年遅れて小学校に入学したが、その容姿は意地悪な子どもたちの格好の餌食となった▼大人になって、健康診断を受けた時に、問診表を見た老医師から、「もう少し前に生まれていたら、死んでいたかもしれないね」と言われた。私が生まれる前後にステロイド剤を使うようになり、それ以前は亡くなる子どもも少なくなかったという。そういえば、「この子は長くは生きられないかもしれない」と医師から言われたと、母から聞いた覚えがある。薬には苦い思い出しかないが、そのお陰で運よく生き延びたのだ▼入院していた日本赤十字病院ではクリスマスにサンタの格好をした主治医がプレゼントを配ったりしていた。食事制限が厳しかったが、昼時には大きなやかんに入った玄米茶が病室を巡り、廊下には玄米の香ばしい香りが漂っていた。

あわせて読みたい