チューニング 2024年6月23日

 私は1986年に大学に入学し90年に卒業した。ちょうどバブルのころだ。バブルを知らない若い方からすると、浮かれ気分で青春をおう歌したのだろうと思われるかもしれないが、私はあの時代があまり好きではなかった▼もう働いていた人には恩恵があったのかもしれないが、地方から出てきた貧乏学生には縁がなかった。むしろひと世代前の「四畳半フォーク」の世界に憧れていて、生まれる時代を間違ったと本気で思っていた▼私が小学生の頃にどこからともなく「バレンタイン・デー」という風習が始まり、お父さんがケーキを買って帰る日だったクリスマスは、いつの間にか恋人と過ごす日にすりかえられた。若者の恋愛は金になる。「若いんだから恋愛しなきゃ」。そんな社会圧がずいぶんかかっていたと思う▼歳をとって、そういう意味ではずいぶん楽に生きられるようになった。こういうところは、歳をとるのも悪くないと感じる▼一方で、やはり、寂しいと思うのは、今までの人生でお世話になった方々が、少しずつ周囲からいなくなることだ。最近では家族葬が多くなり、お別れを言う機会もないことがある。知人が亡くなるたびに、その方と過ごした日々、つまり私の人生の一部も、終わったように感じる。

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