チューニング 2024年5月26日
映画紹介の欄に「ゴジラ-1.0」の原稿を書いた。ゴジラの最初の作品が公開されたのは1954年秋。同年春には太平洋ビキニ環礁のアメリカの水爆実験で、マグロ漁船第五福竜丸の乗組員が被爆。そのほかにも多くの漁船が被爆した。広島・長崎に続く「第三の被爆」は、当時の日本人に衝撃を与えた▼ゴジラはこの水爆実験がもとで生まれた怪物という設定で制作された。ゴジラ誕生から70周年を記念して作られた「ゴジラ-1.0」は、この設定を忠実に守っている。ゴジラはただの怪物ではない。核実験がもたらしたモンスターだからこそ、物語に深みが生まれる▼ゴジラというコンテンツは海外でも人気で、ハリウッドでも盛んに作られるが、この核兵器へのアンチテーゼという側面は弱い。多くの市民を無差別に殺戮した2回の原爆投下と東京大空襲は明らかな戦争犯罪だと思うが、アメリカが裁かれることはない▼ただ、加害には鈍感で、被害には敏感になるというのは、私たち日本人を含めてどこの国も同じ。もしも、ヒトラーがいなかったら、欧米のの同情とイスラエルの建国はなく、結果ガザ侵攻もなかったかもしれない。ナチスから受けたジェノサイドを、ナチスとは無関係のパレスチナ人に行っているというのは、皮肉だ。