日曜日に観たい この1本
ゴジラ-1.0
「シン・ゴジラ」(庵野秀明監督)のゴジラが大規模災害の象徴として描かれていたのに対して、「ゴジラ-1.0」(山崎貴監督)のゴジラは「戦争」という日本人にとっての巨大なトラウマそのものだ。
主人公の敷島浩一(神木隆之介)は特攻隊のパイロットだったが、特攻を回避して整備兵のいる大戸島に不時着した。その夜、ゴジラが島を襲い、敷島は零戦の機銃でゴジラを撃つように請われたが、手がすくんでしまって撃てなかった。隊は全滅。生き残ったのは敷島と整備兵の橘宗作(青木崇高)だけだった。
敷島は帰国するが、
空襲で東京は焼け野原。敷島の両親も生きていなかった。敷島は身寄りのない大石典子(浜辺美波)と出会い、典子が抱いていたアキコという戦災孤児と3人で暮らし始める。
敷島は水島四郎(山田裕貴)、野田健治(吉岡秀隆)、秋津淸治(佐
々木蔵之介)らと「新生丸」という木造船に乗って機雷除去の任務に就く。そこで、ビキニ環礁の水爆実験で巨大化したゴジラに再び遭遇する。そして、ゴジラはやっと復興し始めた東京を襲う。
まさに泣きっ面に蜂という状態。タイトルの「-1.0」は「マイナスワン」と読む。なにもかもを失い文字通り「無(ゼロ)」になった日本に、追い打ちをかけるようにゴジラはその圧倒的な力で「負(マイナス)」へと叩き落とす。
敷島の戦争はまだ終わっていない。特攻から逃げたという負い目、零戦の機銃を撃てず、整備兵たちを見殺しにしてしまったという後悔が敷島を苦しめる。典子は敷島が背負っている何かに気づき、寄り添おうとする。やっと始まりかけていた穏やかな暮らしが、ゴジラによって叩き壊されていく。ゴジラ映画を観て、こんなに泣けるとは思わなかった。人間ドラマがすばらしい。
この作品はアメリカでも大ヒット。第96回アカデミー賞®視覚効果賞を日本映画として初めて受賞した。劇中に登場するゴジラは本当に恐ろしい。そして、音が凄い。配信で観たが、この映画はやはり映画館で観るべきだと思った。東京ではわずかだがまだ上映している映画館がある。終わらないうちに、ぜひ行ってみたいと思う。【戸田 照朗】
監督・脚本・VFX=山崎貴/音楽=佐藤直紀/出演=神木隆之介、浜辺美波、山田裕貴、青木崇高、吉岡秀隆、安藤サクラ、佐々木蔵之介/2023年、日本
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『ゴジラ-1.0』、ブルーレイ&DVD発売中、DVD3枚組税込4950円、発売元・販売元=東宝株式会社