チューニング 2023年12月17日
先月25日土曜の朝。前日の24日に26日に発行する新聞の印刷を終え、ラジオでニュース番組を聴きながら、犬の散歩をしていた。そこで初めて作家の伊集院静さんが24日に亡くなられたことを知った▼26日に発行する新聞に伊集院さんのエッセイ集『君のいた時間』の紹介記事を書いたばかりだった。「君」というのは、伊集院さんの愛犬ノボのことだ。ノボと過ごした17年半という幸せな時間。その喪失の大きさに、かなり苦しまれたようだった▼訃報を耳にした私は、その場で膝から崩れ落ちるようにしゃがみこんでしまった。もちろん、伊集院さんと面識があるわけではない。ただ、記事を書くためには、しばらくの間、その著作と真剣に向き合うことになる。本を読んで、伊集院さんの生活が、すぐそこにあるように感じていた。「伊集院さん、ノボのそばに行ってしまわれたんだな…」。そう思ったら、涙が出た▼書いたものが残るというのは、こういうことだと思う。本を読むと、私たちはいつでも時空を超えて、著者に触れることができる。私は歴史の原稿を書く時に、いつも松下邦夫さんの仕事に触れる。昨年5月に亡くなられた根本圭助さんが最後に残されたのは、弊紙に書いたコラムなどをまとめた一冊の本だった。