日曜日に観たい この1本
雄獅少年/ライオン少年

 中国で製作されたCGアニメーション。ここで登場する獅子舞は日本の獅子舞とは違い、競技、スポーツ、あるいは格闘技と言ってもいいだろう。
 主人公は、中国の田舎で暮らす貧しい少年チュン。両親は都会に出稼ぎに出ていて、祖父と暮らしている。ある日、チュンは街で行われた獅子舞バトルを目にする。そこに現れた謎の赤い獅子頭。中にはチュンと同じ名前を持つ少女が入っていた。少女は華麗な舞で、チュンをバカにした屈強な男たちを手玉に取る。チュンは少女から獅子頭をもらい受け、友だちのマオとワン公を誘い、獅子舞のチームを作ることにした。獅子舞のチームは3人で1組。2人が獅子の中に入り、1人が太鼓をたたく。マオは猿に似た容姿に、ワン公は太った体型にコンプレックスを持っていた。
 チュンたち3人は、若い時に獅子舞選手として活躍していたチアンに無理やり弟子入りし、猛特訓を始めた。チアンは結婚を機に獅子舞をやめ、魚屋を営んでいる。最初は妻アジェンの目を盗んで3人を指導していたが、次第にアジェンも応援してくれるようになる。アジェンにも生活のために夫の夢をあきらめさせた、という後悔があったようだ。
 チアン、アジェンの夫婦に子どものようにかわいがられる3人は、家族のようになり、獅子舞の練習に励んでいく。そんな時、ある不幸な事故が起き、チュンは一人、都会に働きに行かなくてはならなくなった。
 前半はスポ根ものの典型のような展開で、特訓シーンはジャッキー・チェンの「ドランクモンキー 酔拳」(1978年)のオマージュかと思われるようなシーンもある。
 後半は経済発展していく現代中国の暗部を描く社会派ドラマのような展開。全体的に中国の格差社会が裏テーマにあるように感じる。よく当局に目を付けられずに公開できたと思う。
 現実に押しつぶされそうになりながら、チュンは工事現場の飯場に獅子頭を持っていき、人知れず練習を続ける。獅子舞への思いだけが、チュンを支えていた。そして訪れるラストの展開には胸が熱くなった。
 最初に原語版が公開され、評判となり、日本語吹き替え版が製作されたとのこと。吹き替えが自然で、文化の隔たりを感じさせない親近感がある。繊細な表現と美しい色彩も見事だ。
【戸田 照朗】
 監督=ソン・ハイポン/声の出演=花江夏樹、桜田ひより、山口勝平、落合福嗣、山寺宏一、甲斐田裕子/2021年、中国
 ………………………………………………………
 「雄獅少年/ライオン少年」、ブルーレイ税込5390円、DVD税込4290円、発売・販売元=ギャガ

©BEIJING SPLENDID CULTURE & ENTERTAINMENT CO.,LTD ©TIGER PICTURE ENTERTAINMENT LTD. All rights reserved.

©BEIJING SPLENDID CULTURE & ENTERTAINMENT CO.,LTD ©TIGER PICTURE ENTERTAINMENT LTD. All rights reserved.

©BEIJING SPLENDID CULTURE & ENTERTAINMENT CO.,LTD ©TIGER PICTURE ENTERTAINMENT LTD. All rights reserved.

©BEIJING SPLENDID CULTURE & ENTERTAINMENT CO.,LTD ©TIGER PICTURE ENTERTAINMENT LTD. All rights reserved.

©BEIJING SPLENDID CULTURE & ENTERTAINMENT CO.,LTD ©TIGER PICTURE ENTERTAINMENT LTD. All rights reserved.

©BEIJING SPLENDID CULTURE & ENTERTAINMENT CO.,LTD ©TIGER PICTURE ENTERTAINMENT LTD. All rights reserved.

©BEIJING SPLENDID CULTURE & ENTERTAINMENT CO.,LTD ©TIGER PICTURE ENTERTAINMENT LTD. All rights reserved.

あわせて読みたい