和名ヶ谷の日枝神社
4年ぶり三匹獅子舞
上本郷は10月8日、大橋は10月28・29日

 市指定無形文化財の三匹獅子舞が和名ヶ谷の日枝神社で16日午後6時30分から8時まで奉納された。コロナ禍で3年間奉納が見合わされ、4年ぶりの奉納となった。三匹獅子舞は市内ではほかに上本郷の風早・明治神社と大橋の胡録神社に残っており、昭和44年4月に和名ヶ谷、上本郷、大橋ともに市の無形文化財に指定された。上本郷は10月8日(時間未定)、大橋は10月28日、29日、午後7時30分から奉納される。【戸田 照朗】

 16世紀から17世紀にかけて、京都や奈良、その周辺の農村を中心に華やかな「風流踊(ふりゅうおどり)」が流行した。「風流踊」とは、衣装などに創意工夫をこらした踊りを総称した言い方だという。江戸時代の初めころ、東日本のある地方で「風流踊」の変形として三匹獅子舞が生まれ、急速に東日本に伝播していった。
 和名ヶ谷の三匹獅子舞は松戸では最古と言われ、ここから上本郷に伝えられたと言われている。起源、来歴などは不明で、天明年間(1781年~)に地震や飢饉(ききん)があった時に代官であった倉橋伝助が、みこし、獅子舞を奉納したとされている。獅子舞についての巻物があったが、上本郷や市川の国府台などに伝えにいっている間に紛失してしまったという。
 舞がどのような物語を意味しているのかなどは不明で、後継者に伝承していくのみとなっている。五穀豊穣の祝いと厄病払いのために神の守護を祈るという意味があるらしい。「九 茶碗切り剣の舞」「十 花 『喧嘩』」など、10幕の場面を約1時間半から2時間かけて舞い、体力的にも大変な舞だと言われている。
 獅子舞には、親獅子、女獅子、兄獅子の3人と猿1人が登場する。獅子たちは、腰に太鼓をつけており、これを打ち鳴らしながら、数人の笛の音に合わせて踊る。猿は道化役だ。

後継者不足のなかの継承

 和名ヶ谷の三匹獅子舞は、例年は曜日に関係なく9月20日~22日の3日間奉納されてきたが、今年は日にちを変えて1日のみの奉納となった。 
 氏子総代表の秋谷仁衛さんは、「後継者不足で、師匠格の人が体力的に1日だったら、なんとかやると言ってくれた。現役の獅子たちは、高校生から大学を卒業して、社会人になっている。1日でいいのであれば、自分たちがやると言ってくれた。本来なら20日から3日間やるところを、都合のいい日を選んでほしいと話し、きょうになった。江戸時代の習慣を守って継続するというのは、今の時代は非常に難しくなってしまった。どういう形にしても、形態を変えてでも、1日でも奉納してくれるというのは、嬉しいし、ありがたいことだと思う。昔は農家の長男しかできなかった。選ばれるということは名誉なことだったんですが、今は農家の倅(せがれ)もサラリーマンが多くなって、時間的な都合がつかなくなってしまったんです。日枝神社は正式には山王権現といいます。市川市の下総国分寺の右後ろに小さな日枝神社があります。その延長にあって、(和名ヶ谷の日枝神社は)下総国の国分寺の鬼門を守っている、と言われています」と話した。
 宮司の宮間淳さんは、「コロナ禍など、いろいろな事情がある中、本来とはちょっと形が違いますが、獅子舞がご神前で奉納されることに関しましては、本当に感謝しております」と話している。
 三匹獅子舞が奉納されている他の2地域でも、以前は上本郷が10月8日、9日、大橋が10月28日、29日と決まっていたが、現在は上本郷はスポーツの日の前日、大橋は10月末の土日となっている。今年は折りよく、もともとの日付と重なっているようだ。
 今回獅子舞を舞った3人のうち2人は2016年に高校生でデビューした際に弊紙で取材している。杉山稜太郎さんと相羽芳浩さんは当時市立松戸高校2年生で、ラグビー部に所属していた。コロナ禍で舞を奉納できなかった3年間を除いて、それからずっと獅子舞を続けているという。
 杉山稜太郎さん(24)は、「4年ぶりの開催で、緊張と不安でちょっと複雑な感情ですが、4年ぶりにできるということで、楽しみも込めて、しっかりやりたいと思います。初年度よりは練習時間が減りましたが、夜8時から1時間くらいみんなで練習していたので、大丈夫だと思います」と話した。
 相羽芳浩さん(24)は、「4年ぶりということもあり、部活をしていたころよりも体力の低下も感じた。なんとか練習で立て直そうと頑張りました」と話した。
 河上怜磨さん(21)は、「4年前にデビューして、今回が2回目。父がやっていて、小さいころから見ていたので、ずっとやりたかった。4年ぶりなので、すごく楽しみです」と話した。
 ※参考文献=松戸市立博物館「常設展示図録」、「松戸の歴史案内」(松下邦夫)

右から杉山稜太郎さん、相羽芳浩さん、河上怜磨さん

4年ぶりに奉納された和名ヶ谷・日枝神社の三匹獅子舞

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