国の登録有形文化財「旧齋藤邸」
7月から見学が予約不要に

 平成29年(2017)に国の登録有形文化財となった「旧齋藤邸」(紙敷588番地)が7月1日から予約不要で見学できるようになる。
 登録されているのは、旧齋藤家住宅主屋(しゅおく)。主屋の右側の増築部分は含まれない。明治34年(1901)の建築で、土間の上に直材の梁を井桁に組み天井を張るなど、近代的要素を持つ茅葺の住宅建築。近世以来の農家に、近代的な要素が加わった住宅建築で、近代初頭の地域の景観を今に伝えていることが評価された。
 旧齋藤邸は、芝浦工業大学工学部機械工学第二学科教授だった故齋藤雄三さんが昭和39年(1964)に土地と建物を入手し、妻のトシさんとともに5年ほどをかけて念入りに家屋や庭園を整備した。
 雄三さんの死去にともない相続したトシさん(当時80)は、「この家と庭園を後々まで長く残してくれ」と雄三さんが言い残したこともあり、平成10年(1998)に家屋および庭園の保存と自身の居住を条件に松戸市に寄付した。そのトシさんも平成25年(2013)1月に亡くなられた。
 旧齋藤邸の敷地内(約5500平方メートル)には、一部茅葺屋根の主屋、離れ、倉(竹紙〈ちくし〉工房)、物置がある。主屋の前庭には、梅、松、コブシ、芝庭が広がり、裏側は竹林が広がっている。また、南側道路に面し、生垣が植えられている。
 主屋は、明治39年に建てられたものであることが棟札から判明しており、主屋の規模は桁行き7間×梁間4間半で、前面、左側面、背面に下屋がつき、茅葺屋根に瓦葺の式台付きの玄関が付いている。12畳半の居間を中心に5部屋があり、こげ茶色の重厚な板戸で各部屋が仕切られている。2本ある大黒柱は、約40センチ角で、今では見かけることがないほど立派なものだ。さらに、前面には広縁、左側面は、主屋の屋根を吹き降ろしている。
 現地は東松戸駅から徒歩約13分の場所。近年開発が進む東松戸駅周辺だが、旧齋藤邸は市街化調整区域にあり、周辺は農村の面影を残している。
 寄付後、市は主屋の改修を行うとともに、倉部分を竹紙工房として改修した。
 平成12年度に、水上勉氏が主宰する「勘六山竹紙工房」の技術指導を受け、裏庭の竹を用いて竹紙づくりのノウハウを受け継ぎ、市民対象の講座で、竹紙づくり体験を実施している。竹紙づくりの指導には、遠方に住む水上氏に代わり、水上氏と親交のあった筑紫哲也氏が訪れたという。
 現在は、市民を中心に、見学、貸出、竹紙漉(す)き体験など、社会教育の場として活用されている。
 火曜~土曜の午前10時~12時、午後1時~4時開邸(最終入場午後3時30分)。月、日、祝、休日休み。無料。
 10人以上の団体見学は要予約。
 団体・個人の活動場所として主屋を活用することもできる。
 問い合わせは、☎047・382・5570、松戸市教育委員会生涯学習部文化財保存活用課まで。【戸田 照朗】

茅葺屋根と庭が美しい旧齋藤邸

旧齋藤邸の座敷、中の間、奥

旧齋藤邸の土間玄関

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