チューニング 2023年3月26日
検察が特別抗告を断念し、袴田巌さんの再審開始が確定した。袴田さんは87歳と高齢で、もう時間がない。検察には、これ以上酷(むご)いことをしないでほしいと願っていたので、胸をなでおろした。東京高裁の決定では、物的証拠の衣類について、捜査機関が捏造(ねつぞう)した可能性が極めて高い、としている▼思い出されるのは「狭山事件」の石川一雄さんのこと。2000年6月に「狭山事件にとりくむ東葛住民の会」の方たちと「狭山現地調査」に参加した。石川さんの自宅が再現され、「自白」通りに現地を歩いて、矛盾点を実感した▼「狭山事件」は、1963年に下校途中の女子高生が誘拐され、殺害された事件。別件で逮捕された石川さんが「自白」し、無期懲役となった。2度にわたる念入りな家宅捜索では見つからなかった少女のものとされる万年筆が、3回目の家宅捜索で簡単に見つかった。石川さんの指紋もなく、インクが少女が常用していたものとは違うと弁護側は主張している。石川さんが書いたとされる脅迫状の筆跡も違うように見える▼石川さんは94年、31年7か月ぶりに仮出獄。お会いした当時は第2次再審請求が棄却されてから約1年後だった。石川さんは現在84歳。弁護団は第3次再審請求を行っている。