犬猫の殺処分ゼロへ
動物愛護団体の地道な活動など成果
今週20日からきょう26日までは動物愛護週間。犬猫の殺処分数は昭和40年代には120万頭を超えていたが、動物愛護団体の地道な活動や動物愛護法の強化などにより、半世紀の時を経て「ゼロ」へと向かいつつある。【戸田 照朗】
「その一目惚れ、迷惑です」
ラジオやテレビでACジャパンが流している「その一目惚れ、迷惑です」という公益財団法人日本動物愛護協会のキャンペーン広告。カップルでペットショップを訪れた男性に「抱っこしてみますか?」と勧める店員。フワフワの犬に感激した男性は一気にテンションが上がり、「一目惚れ」してしまう。ペットの安易な衝動買いと、客の衝動買いを促す安易な販売を諌(いさ)める広告だ。売買されるのは命なのだから、生涯面倒を見る覚悟で、冷静になってもう一度よく考えてみましょう、ということだと思う。
1973年に議員立法で成立した動物の保護及び管理に関する法律(動物保護法)は1999年に初めて改正され、法律名も動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護法)と改められた。動物保護法は動物の虐待・遺棄に対して3万円以下の罰金を科していたが、「虐待」の定義が曖昧で検挙率も非常に低かった。法律上、動物は「物」扱いで、虐待・遺棄しても「器物損壊」にしかならなかった。「理念中心の実効性に乏しいザル法」とのそしりを受けていた同法を改正しようと、動物愛護団体が改正運動を展開。全国100以上の動物愛護団体でつくる「動物の法律を考える連絡会」(塩坪三明事務局長・東京都杉並区)は、30万人の署名を集めるなどして、国会議員に改正を働きかけた。当時愛護団体の中では、自民党が出してきた改正案が不十分だという否定的な意見と、26年かけて初めて改正されるのだから、第一歩を踏み出したことを評価する意見があった。不十分とする意見の中に、それまで規制のなかった動物取扱業者については届出制になったが、もっと規制の強い登録制、あるいは許可制にすべきだ、という意見があった。同法は附則で5年ごとの見直しがされることになっており、後の法改正に期待することになった。
同法は2005年、2013年、2019年に改正が行われ、様々な規制が強化された。
動物取扱業者の届出制は登録制になった。動物販売業者・飼い主ともに終生飼養することが明記され、行政も動物の引き取りを拒否できるようになった。幼齢の犬猫の販売制限や夜間の展示も禁止された。また、動物をみだりに殺したり傷つけた場合の罰則も1999年には1年以下の懲役又は100万円以下の罰金だったものが、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金に厳罰化。みだりに繁殖することを防止するために、飼い主は不妊去勢手術をすること。販売される犬猫のマイクロチップの装着、所有者情報の登録等が義務化された。
譲渡が増え殺処分減少
令和元年度に全国の自治体が引き取った犬猫は8万5897頭(犬3万2555頭、猫5万3342頭)。うち、殺処分されたのは3万2743頭(犬5635頭、猫2万7108頭)だった(病気などが原因で、施設収容後に死亡した数も含む)。殺処分されなかった犬猫は、返還、あるいは譲渡された。行政による地域猫活動(野良猫の避妊去勢手術をして、地域で見守り管理し、一代限りの命を全うさせる取り組み)の推進や動物愛護センターや民間の動物愛護団体による犬猫の里親探しなど、地道な努力もあり、殺処分数は年を追うごとに減っている。
取材した動物愛護団体に「80万からゼロへの会」という会があった。右掲のグラフ(全国の犬猫の殺処分数の推移)で見ると、平成6年(1994)が76万5千頭である。同会はこれより少し前に設立されたのかもしれない。グラフの中で一番古い昭和49年(1974)は122万1千頭が殺処分されている。猫は6万3千頭で、圧倒的に犬が多かった。
当時は野良猫が少なかったのではなく、野良犬(野犬)のあまりの多さに、猫にまで捕獲の手が回らなかったのではないか、と推測する。狂犬病予防法により、犬はある程度管理されてきた。
殺処分される犬と猫の数が逆転するのは平成12年(2000)で、令和元年度は82%が猫だった。行政が地域猫活動など、猫の対策に力を入れる要因だ。
「80万からゼロへの会」を取材した1996年は、「殺処分ゼロなんて夢のようだ」と思っていたが、もう目前のように感じる。千葉県の場合、政令市・中核市の千葉市、船橋市、柏市は独自の動物愛護行政を行う。千葉市は施設収容後に病気などで亡くなった犬猫を除くと、2015年度から2019年度まで5年連続で「殺処分ゼロ」を達成している。
不妊去勢キャンペーン
首都圏の動物病院とボランティアによる「不幸な犬猫をなくすネットワーク千葉」は、今年も通常料金の半額程度で犬猫の不妊去勢手術を提供する「不妊去勢キャンペーン」を実施している。
▼対象=手術費用にお困りで、東京、神奈川、千葉、埼玉の指定病院に連れて行ける方
▼手術期間=来年3月末日まで
▼申し込み方法=封書で、手術を受けさせたい①犬猫の別、②性別、③頭数、④申し込み者の住所、氏名、電話番号を明記し、94円切手を貼った返信用封筒(申し込み者のあて先を記入)を同封の上、〒285-0807千葉県佐倉山王郵便局局留「不幸な犬猫をなくすネットワーク千葉」行へ
▼キャンペーン期間中の手術料金=猫メス1万500円、オス5500円。犬メス1万8500円、オス1万500円(犬のみ15キロ以上は料金加算)
▼FAX専用受付=043・485・1527
※手術料金のほか、運営費として1頭につき500円頂きます。 ※年間通して前記料金で手術を受けられる動物病院もあります。