大河ドラマ「青天を衝け」で徳川昭武役
板垣李光人さんが戸定邸を訪問

 NHKで放送中の大河ドラマ「青天を衝け」で徳川昭武を演じている俳優の板垣李光人(いたがきりひと)さんが5日、戸定邸を訪問した。板垣さんは戸定歴史館の齊藤洋一名誉館長の案内で同館で開催中の特別展「幕府再興とパリ万博ー1867・運命の転換点」を見学したほか、昭武の陣羽織(複製)を着ての写真撮影、本郷谷健次市長、齊藤名誉館長との鼎談(ていだん)などを行った。【戸田 照朗】

 「青天を衝け」は、「日本近代資本主義の父」と言われ、日本を代表する多くの企業の創設に関わった渋沢栄一を主人公に、栄一の運命を変え、大きな影響をもたらした徳川慶喜との関係を描いている。昭武は慶喜の弟で、慶喜の名代としてヨーロッパ使節団を率いた。この使節団に参加したことが栄一にも大きな影響をもたらした。昭武が隠居後、終のすみかとしたのが松戸にある戸定邸だ。
 戸定邸の主となる徳川昭武は嘉永6年9月24日(1853年10月26日)、江戸の水戸藩中屋敷(現在の東大浅野キャンパス)で水戸藩主徳川齊昭の18男として生まれた。後に昭武の人生に大きな影響を及ぼす慶喜は7男で、16歳上の異母兄であった(齊昭は37人の子を成している)。昭武が生まれた1853年は、ペリーが浦賀に来航し、日本に開国を迫った年だった。
 1867年、15代将軍となった慶喜は翌年のパリ万国博覧会への正式参加を決め、将軍の名代として当時13歳の昭武をパリに派遣することを決めた。この時の使節団には渋沢栄一など、維新後日本の近代化に貢献した英才が含まれていた。
 パリ万博に日本は武器、装束(礼服)、漆工芸品、焼き物、油絵を含む絵画、建物の模型など推定10万を超える品を出品。日本のパビリオンは大好評で、ヨーロッパにおける日本熱「ジャポニズム」の契機ともなった。日本は、初参加にもかかわらず、最高賞のグランプリメダルを得ている。
 パリ万博での主要行事が終わると、昭武はスイス、オランダ、ベルギー、イタリア、英領マルタ島、イギリス各国をめぐり、イギリスの新聞などでは、次期将軍の期待を込めて「プリンス・トクガワ」として紹介されている。
 慶喜は昭武にそのままフランスに残り、長期留学することを命じている。慶喜は幼少のころから有能な弟昭武に大きな期待をかけており、西洋の先進文化を習得させようとした。
 しかし、その頃日本では大きな政変が起きていた。大政奉還、王政復古の大号令、戊辰戦争、江戸無血開城である。昭武がフランスで猛勉強をしている最中、幕府は終焉を迎えた。昭武は新政府の帰国の命令を受けて、志半ばでフランス留学を終えることになった。
帰国した昭武は15歳で水戸藩主、16歳で水戸知藩事となるが、2年後の1871年には廃藩置県で水戸藩自体がなくなった。
 明治9年(1876)、昭武はフィラデルフィア万博御用掛として渡米し、万博終了後に政府に願い出て、パリ留学を再開した。この留学は5年に及び、帰国後はその知識を生かして、麝香間伺候(じゃこうのましこう)という公職を得て、明治天皇に近侍した。
 明治16年(1883)5月、昭武は29歳で水戸徳川家の家督を甥の篤敬に譲り、隠居。翌年完成した戸定邸に移り住んだ。明治25年(1892)には、昭武の勲功により、満3歳になる二男武定が分家して子爵を授けられ、松戸徳川家を創設した。
 戸定邸は平成18年(2006)国の重要文化財に指定された。旧徳川昭武庭園は平成27年(2015)国指定名勝に指定された。

「魅力的で尊敬できる」

 板垣さんは2002年1月28日生まれの19歳。11歳で俳優デビューし、テレビドラマ「仮面ライダージオウ」での美少年ぶりが話題に。映画は「約束のネバーランド」(20年)や2021年公開の「ツナガレラジオ~僕らの雨降DAYS~」「ゾッキ」など、話題作に出演。2015年放送の大河ドラマ「花燃ゆ」にも出演した。「カラフラブル~ジェンダーレス男子に愛されています。」でドラマ初主演を果たした。
 板垣さんは撮影前にも戸定邸を訪れており、今回が2度目の訪問だという。
 「撮影の期間、昭武として過ごしてきたので、ここに来ると不思議と懐かしい感じがします。あの年齢(13歳)で日本を背負って海外に行くということが自分としては考えられないし、絶対に無理だと思ってしまうので、すごいなと思います。自分が生まれ育ってきた日本という国で色々起こっているということを、何千キロも離れた外国で知り、自分が何もできないというもどかしさを外国で感じている、というのを10代で経験する。それでも前を向いて進んでいく。人間としても魅力的で尊敬できます。パリだけではなく、ヨーロッパの色んな国々に行って話を聞いて、吸収して、それを日本に置き換えた時にどうなるかというのをちゃんと考えられるというのがすごいなと思いました。例えば織田信長だといろんな方々が演じられてきて、いろんなイメージがありますが、昭武は以前に大河ドラマでちょっと出てきましたけど、しっかり演じられるのは初めて。イメージを作るうえで最初みたいなところがあったので、責任をすごく感じます。10代のうちにこれだけの役者の方々に囲まれた中で芝居させてもらえるというのはすごく贅沢な時間だなということを撮影している最中思っていました。大河ドラマを経験させてもらえたというだけでも、自分の中でも自信みたいなものにつながってくるなと思っています」と話した。

戸定歴史館で特別展

 特別展「幕府再興とパリ万博ー1867・運命の転換点」 
 会期=9月20日まで(前期)、10月13日~31日(後期)
 会場=戸定歴史館展示室
 入館時間=9時30分~16時30分(17時閉館)
 休館日=月曜日(ただし休館日が祝日の場合は翌日休館)
 入館料=一般150円、高校・大学生100円、中学生以下無料。戸定邸との共通入館券あり。
 問い合わせ=☎047・362・2050 戸定歴史館
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 ※参考文献=「徳川昭武ー松戸に住んだ幻の将軍ー」「プリンス・トクガワ」(松戸市戸定歴史館)

左から齋藤名誉館長、本郷谷市長、板垣さん、木村議長

齋藤名誉館長(左)の案内で特別展を見学する板垣さん

昭武の陣羽織(複製)を着た板垣さん(右)

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