チューニング 2021年4月25日

 大戦は後の世に大きな影響を及ぼす▼関ヶ原の戦いで西軍の総大将だった毛利軍の動きは鈍く、わずか1日で決着がついた。領地を大きく削られた毛利は長州藩となって江戸時代を生きる。260年続いた泰平の世の中で、関ヶ原の失敗をさぞ悔やんだことだろう。幕末の戊辰戦争では、関ヶ原で同じく苦杯をなめた島津(薩摩)とともに徳川幕府を破り、明治政府の中枢を占めた▼今の私たちも大戦の後の平和を生きている。太平洋戦争における関ヶ原はミッドウェー海戦。戦前の海軍のシミュレーションで何度やっても「敗戦」という結果が出るため、「勝利」という結果が出るまで都合の悪い条件を削っていったという。結論ありきのシミュレーションは意味がない。海軍は壊滅的な敗北を喫した▼今の政府のコロナ対策を見ているとこの時の日本軍を思い出す。「徹底的に検査をして感染者を見つけ出す」「病床を増やす」「ワクチンと治療薬を早期に開発する」。先手必勝の感染症対策でやらなければならないことは分かっているのに、1年半たってもどれひとつとしてできていない▼オリンピック開催という「結論」のために、検査を徹底せず感染者数を少なく見せても、ウイルスは忖度してくれない。冷徹な現実が待っているだけだ。

あわせて読みたい