日曜日に観たい この1本
ルース・エドガー

©2018 DFG PICTURES INC. ALL RIGHTS RESERVED.

 アフリカ系移民のルースは文武両道の優等生。ユーモアを交えたスピーチを披露し、学業も優秀。スポーツもできて、みんなから愛されている。彼を引き取って育てている白人の養父母の自慢の息子だ。そんなルースに疑念を持ったのは、同じアフリカ系の歴史教師ウィルソン。彼が書いた論文に過激思想が見えると考える。また、ルースのロッカーから違法な花火が見つかった。ルースはアフリカの政情不安定な国で少年兵として訓練された過去があり、そんなプロフィールがウィルソンの疑念を膨らませたのかもしれない。ウィルソンはルースの養母を呼び出して自らの疑念を伝える。英語もできないルースを引き取った養父母は、最初の頃、苦労をしたようだ。やっと順調に進みかけた家族が、ウィルソンが持ち込んだ疑念をきっかけにギクシャクし、不安定になっていく。養父母、特に養母はルースを信じたいと思うのだが、高校生になったルースには自分たちの知らない側面もある。
 ルースはウィルソンとの関係修復を試みるが、ウィルソンはなかなかルースのことを信じようとしない。そんな中、ウィルソンの立場が悪くなるある事件が起きていく。それは偶然起きたのか、それともルースが何か関係しているのか…? とにかく、ルースが実はどういう人物なのかが最後まで分からない。この辺の展開はミステリーの香りもする作品である。
 観終わってもモヤモヤとスッキリしない作品だった。
 「政情不安定なアフリカの国から引き取られた黒人少年がアメリカの民主主義の中で成長し、成功してゆく」。ルースはこんな「アメリカの麗しい物語」を押し付けられて苦しんでいるようにも見える。
 ウィルソンがあそこまでルースのことを疑う理由はなんだろうか。彼女は校長の信頼も厚い優秀な教師として登場する。その評価を得るために、彼女自身も自分を殺して生きてきたのかもしれない。
 一度観ただけではなかなか消化できない作品である。人種差別がどうだとか、そんな単純なものではない気がする。アメリカの文化、社会の闇を深くえぐっている作品だということは、なんとなく分かるのだが…。
 【戸田 照朗】
 監督・製作・共同脚本=ジュリアス・オナー/出演=ナオミ・ワッツ、オクタヴィア・スペンサー、ケルヴィン・ハリソン・Jr.、ティム・ロス/2019年、アメリカ
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 「ルース・エドガー」、ブルーレイ税別4800円、12月2日発売、発売元=キノフィルムズ/木下グループ、販売元=ハピネット・メディアマーケティング

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