日曜日に観たい この1本
ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語
この作品はこんなショットから始まる。
ドアの前で呼吸を整える背中。後ろ姿からは、男性か女性か分からない。
意を決したようにドアを開けると、中は雑誌の編集部。作家志望のジョー(シアーシャ・ローナン)は編集長らしき人物の机の前に行き、原稿を見せる。
原稿は採用になり、喜びのあまりニューヨークの街を駆け出すジョー。ジョーはスカートではなく、ズボンを履いている。この時代には珍しい。
編集長らしき人物は、いくつかの条件をつけた。主人公の女性は最後は結婚すること、それができなければ死ぬこと。
短いシーンだが、この作品のテーマが端的に描かれている。
今から100年以上前の南北戦争の頃のアメリカの女性には選択肢がなかった。女性の幸せは結婚にある、と誰しもが信じていた。結婚しなければ、経済的にも生きていけない。
そんな時代にあって、ジョーは自分の才能を信じて生きていこうとしていた。
「若草物語」を読んだことがないので、この作品が原作をどうアレンジしたのかはわからない。
ジョーの回想として4姉妹の過去と現在が描かれている。
自由奔放なジョーは次女。長女のメグ(エマ・ワトソン)は貧しくとも幸せな結婚を選んだ。心優しい三女のベス(エリザ・スカンレン)は持病が悪化して苦しんでいる。四女のエイミー(フローレンス・ピュー)はお金持ちの叔母(メリル・ストリープ)に見込まれて、パリで絵の勉強をしながら結婚相手を探している。
彼女たちの少女時代、父親は北軍の従軍牧師として戦場にいた。家は母親(ローラ・ダーン)と4姉妹の女ばかり。
姉妹の中で、ジョーとエイミーは少女時代からよくぶつかってきた。隣に住んでいるお金持ちの家の子・ローリー(ティモシー・シャラメ)はジョーのことが好きだった。エイミーはローリーに気がある。そのローリーが、パリで絵の勉強をしているエイミーの前にふらりと姿を現した。
四姉妹それぞれの幸せのありかたを描いている。
ジョーは美人の姉メグには女優の才能があると見込んでいたが、メグが選んだのは結婚だった。何を人生の優先順位1番にするかは人それぞれなのだ。
ヒラリー・クリントンが言った「ガラスの天井」のように、生き方の選択肢は格段に広がったとはいえ現代の女性にも壁はある。
ジョーが編集部のドアを開けたのは、「ガラスの天井」を打ち破る第一歩のように思える。【戸田 照朗】
監督・脚本=グレタ・ガーウィグ/出演=シアーシャ・ローナン、エマ・ワトソン、エリザ・スカンレン、フローレンス・ピュー、ティモシー・シャラメ、ローラ・ダーン、メリル・ストリープ/2019年、アメリカ
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『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』好評リリース中、ブルーレイ&DVDセット4743円(税別)、発売・販売元=ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント