チューニング 2020年2月23日
2月11日にプロ野球の名捕手で名監督だった野村克也さんが亡くなった▼私がノムさんのことを知ったのは、実はマンガの方が先だった。水島新司の「あぶさん」。南海ホークスの酒豪のスラッガー景浦安武を主人公にした野球マンガだ。1973年の連載開始時、ノムさんはまだ南海の現役捕手だった。物語の中で何度も実名で登場していた▼ストーリーの進行上、試合のシーンはラジオかテレビの実況が入っているという設定になっているのが水島マンガの常だが、現実にはそんなことはありえない。巨人戦でもなく、ましてやパ・リーグの試合が日常的にテレビに映ることはない▼球場が身近にない田舎の少年にとっては、パリーグの選手を映像で見る機会は、夜のプロ野球ニュースぐらいしかなかった。テレビに映らない試合にどれだけの名試合、名プレーが隠れていたかと思うと、気が遠くなるくらいもったいない思いがする▼水島さんはそんなパ・リーグにスポットをあてて作品を残した。当時のパ・リーグの選手は、ノムさんに限らず月見草のような存在だったかもしれない▼「ドカベン」では、それまで脇役だったキャッチャーを主人公にした。もちろん発想の原点にはノムさんがいたと思う。心よりご冥福をお祈りいたします。