貴重な郷土資料を図書館に
郷土史家・神尾武男さんの遺品を寄贈
4月27日に90歳で亡くなられた松戸史談会元会長で郷土史家の神尾武男さんが所有していた図書60点と写真100点以上が松戸市立図書館に寄贈され、本館3階にその一部が1月30日まで展示されている。【戸田 照朗】
神尾さんは元国鉄職員で昭和30年代後半に松戸市内に移り住んだ。当時の松戸は都市化が急激に進んでおり、多くの史跡や文化財が損なわれていた。神尾さんは仕事の合間に史跡などの写真を撮り、分からないことは松戸市の市史編さん室に問い合わせ、解説付きの写真パネルにして自宅近くの馬橋駅の構内に掲示したり、小学校の副読本として提供したりしていた。
松戸史談会(松田孝史会長)は松戸の歴史を研究している民間団体で、昭和35年に発足。昭和51年発行の会誌『松戸史談』16号に神尾さんの原稿が掲載されていることから、このころ神尾さんも入会したと思われるという。神尾さんは、5代目の会長を務めた。教育委員会や松戸史談会が主催する「史跡めぐり」の講師や市の「観光大使」も務めた。「史跡めぐり」では、参加者に得意のハーモニカを披露する姿も見られたという。
寄贈された図書の大半は『松戸史談』。今年の11月までに59号が発行されている同誌は松戸市立図書館にも蔵書があるが、欠番もあるため、貴重だという。また、写真は史跡などを中心に神尾さんが展示などで使ったものなのか、手書きの解説が付いたパネルになっている。
寄贈に協力をしたのがNPO法人松戸市民劇団の石上瑠美子さん。神尾さんとは平成10年にできた「観光大使」として知り合った。その後、「史跡めぐり」などにも参加して親交を深めた。「健脚でびっくりしました。上本郷の七不思議を見たあとに、歩いて戸定邸を見に行きました」。今回も教えて欲しいことがあって5月に電話したところ、訃報に触れたという。神尾さんが貴重な資料を所蔵していることを知っていた石上さんは遺族の承諾を得て松戸市立図書館の臼井眞美館長に相談した。
資料の整理にあたった司書の宮下信さんは、「『松戸史談』は松戸の郷土を知る上では貴重な資料。1号からほとんど欠号なくご寄贈いただいた。当館でも所蔵はあるが、さらに所蔵数が増えたことで、今後新しい図書館が設置された場合に、そちらに移すことで、より広い方に松戸の歴史を知っていただけるようになります。『松戸市史』も上巻は改版する前のもので、今は改訂版が出ていますが、改版前のものも無視できない貴重な資料となっています。さすが郷土史にたくさん関わられてきた神尾さんならではの資料です。写真も神尾さん独自のもので、郷土をわかりやすくまとめていただいた貴重な資料になります」と話している。
臼井館長は、「図書館は市民のために松戸の未来に何を残すのかを考える機関であり、図書館の所蔵する郷土資料はその役割を担っています。今後も松戸市の郷土資料を市民との情報共有や連携を図りながら探求し所蔵していきたいと考えています。今回は神尾さんから遺族へ、遺族から石上さんへ、石上さんから図書館へと日頃のつながりが貴重な資料を図書館に届けてくれました」と話している。