クラフトビール「松戸ビール」
体験醸造教室も開催
松戸駅の近くにクラフトビール(職人が作った地ビール)が飲める店がある。その名も「松戸ビール」。今年4月にオープン。醸造所(ブルワリー)兼店舗(タップルーム)が松戸駅東口のイトーヨーカドーと聖徳大学の間(松戸1151│2)にある。店主の渡邊友紀子さんの考えるビールを山田泰一さんがサポートしながら醸造している。同店では、この秋からビールの体験醸造教室も始め、参加者を募集している。【戸田 照朗】
週に4日のみ営業。木・金曜が午後5時から10時まで。土・日曜は午後2時から7時まで。店舗が開いていない日は、醸造所でビールを作っている。
松戸ビールで作っているのは「エール」。高めの温度で短期間で発酵させる。タンクの中で上面発酵させる香りのいいビールだ。大手ビール会社が作る「ラガー」は、低い温度で長期間下面発酵させる。
現在お店で出しているのは、アノコロノベニトビ、鬱金(うこん)、月白・爽(げっぱく・そう)、青鈍・香(あおにび・こう)、式部(しきぶ)の5種類で、日本の伝統色にちなんで名付けられたものが多い。色はビールの色を表している。アノコロノベニトビはIPA(インディア・ペールエール)というスタイルで、10月に新設備導入後初仕込みのビール。若く荒々しい苦さのあるフルーティな味。鬱金は、アメリカン・ペールエールというスタイル。麦の味わいを生かし、柑橘系のホップで香りをつけている。月白・爽はセゾンというスタイル。小麦麦芽を使った軽やかで少し酸味を感じるヨーロピアンなビール。青鈍・香はハーブ・スタウトというスタイル。チョコレート風味の麦芽を使い地元ハーブ園のスペアミントで香りづけした黒ビール。式部は、シソ・ハーブ・セゾンというスタイル。やさしい麦の味わいの中に京都産の赤しその風味とハイビスカスのほんのりとした酸味を感じる。
お店ではつまみも用意しているが、ビールが主役になれるような簡単なものだ。
渡邊さんは、結婚を機に新潟から松戸市内に移り住んだ。ご主人はキャラクターフィギアを製造する会社を営むかたわら、中央区茅場町で飲食店も営んでいた。その一角で2017年に醸造所を始めたが、昨年お店を閉めることになり、酒造免許が失効する3月末までに醸造所を移さなくてはならなくなった。㈱まちづクリエイティブに現在の場所を紹介され、移転した。
渡邊さんと山田さんは、ビール作りの私塾で知り合い、茨城県の木内醸造でビール作りを体験した。同店でも体験醸造教室を開催している。期間は来年のゴールデンウィークごろまで。渡邊さんは「私も体験醸造を経験してとてもたのしかった。麦からお酒ができるのって不思議。参加者と楽しさを共有したい」と話している。
今後は、宇宙かぼちゃ、梨、米など松戸産の野菜を使ったビールの醸造も考えているという。
ビール作りの楽しさ共有したい
体験醸造教室の費用は5人参加で4万円(1人8000円)。完成したビールを瓶詰めにして40本(1人8本)もらえる。時間は6時間から7時間程度。昼食として渡邊さんが作ったカレーとビールサービスチケット1枚がつく。16日には近くの税理士法人に勤める4人が参加した。参加者の希望で、この日はIPAを作ることになった。
ビール作りには、様々な細かい作業があるが、大きな流れを書くと以下のようになる。鍋のお湯の中に細かく砕いた麦芽を入れ、適度な温度で約30分程度置くと、麦芽の酵素の働きででんぷん質が糖分に変わり、糖化液ができる。これをろ過しながら、煮沸用の鍋に移す。鍋の糖化液を煮沸し、ホップを加える。ホップはビールに特有の苦味と香りをつけると同時に麦汁中のたんぱく質を凝固分離させ、液を澄ませる働きがある。こうしてできた熱い麦汁を冷やして貯蔵タンクに移す。最後にタンクに酵母を投入する。体験教室はここまでで、3週間から4週間後にビールが完成する。この貯酒期間中の5日目と7日目にそれぞれ違うホップが投入される。
体験教室は、まず麦芽14・5キロを計量するところから始まった。ビールが麦芽から作られることは、ビール好きでなくても知っている。しかし、実際に麦芽を目にすることはめったにない。麦芽を食べさせていただいたが、香ばしく、少し甘みもあり、つまみとしてそのまま食べられそうだ。この麦芽を機械で細かく粉砕して、糖化鍋に入れる。この日のビールの目標としているアルコール度数6度になるように糖化液の糖度を測りながら作業をする。
ホップは真空パックに入れられて冷凍保存されていた。ホップもビールの大切な原料だが、やはり実際に目にすることは少ない。パックを開けて香りをかがせていただくと、ビールの爽やかな香りが鼻腔をくすぐる。この香りがビールの香りを決めているのだと実感する。参加者たちはいくつかのホップの中から、貯蔵期間中に投入する2種類のホップを選んだ。
酵母も見せていただいたが、ベージュ色のようなドロドロとした液体だった。
発酵中に自然に炭酸は生まれるが、同店では人工的にも炭酸を加えているという。
参加者の男性はビールが大好きで、ビール作りについても調べているという。「実際にどんな風に作っているのかを見られたのはよかった」と話していた。
また参加者の女性は「大きなビール工場でなんとなく工程を見て回ることはあっても、こんなに細かく説明を聞くことはなかったので、新鮮で勉強になりました。自分たちで作ったビールを1か月後に飲めるんだ、というワクワク感があります」と話した。
問い合わせは、☎047・711・7218松戸ビールまで。