チューニング 2019年8月25日

 

 Eテレで映画「ひろしま」を観た。被爆からわずか8年後の広島で撮影。製作のために一人50円のカンパを募り、約4,000万円、現在のお金で約2億5000万円が集まったという▼関川秀雄監督をはじめ、当時の一流の映画人が製作に携わり、月丘夢路、岡田英次、山田五十鈴、加藤嘉らが出演した。主演の月丘さんは広島の出身で、出演に反対する所属映画会社を説得し、無償で参加した▼8万8000人ものエキストラが参加。その多くが実際に被爆した人たちだった。つらい記憶が蘇る撮影に耐え、映画が完成した。特に被爆直後の広島を描いたシーンは圧巻。まさに地獄絵そのものである。原作の「原爆の子」(長田新・編)に寄稿した子どもたちも多く出演しているが、どこまでが「演技」なのか、鬼気迫るものがある▼製作で頼ったのが日教組だったこともあり、占領から冷戦へという時代の流れの中で作品は映画館で上映されることなく、お蔵入り。ほとんど人目に触れることがなかった▼監督補佐の子孫の方が、上映会などを続けているほか、アメリカの会社が資金を出してリマスター化。世界10か国で配信、上映されているという。66年の時を超えて「この悲惨な現実を後世に」という人々の思いが日の目を見つつある。

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