日曜日に観たい この1本
万引き家族
「誰も知らない」「そして父になる」「海街diary」など、この欄で紹介した是枝裕和監督の作品はいずれも「家族」がテーマになっている。今回の作品は、その集大成とも言える作品だという。
高層マンションに囲まれるようにポツンと残されたボロボロの木造平屋建ての一軒家。ここに暮らすのは治と信代の「夫婦」、「息子」の祥太、信代の「妹」亜紀と「母」の初枝の5人。そこへ祥太の「妹」として、幼いゆりが加わる。
ゆりは、真冬の夜に団地の廊下で震えていた。そんなゆりを見かけた治は見かねて家に連れて帰る。初枝がゆりの体に触るととても痩せていて、至るところに傷がある。でも、「このままでは誘拐になる」という意見が出て、治と信代はゆりを返しに行くが、団地の前まで来ると、言い争う男女の大きな声が。最初はゆりを「家族」に入れることに反対した信代だったが、ゆりを抱きしめたまま離せなくなってしまった。
タイトルからして万引きで生計を立てている家族の話かと思ったが、そうでもない。治は日雇いの工事現場で働き、信代はクリーニング工場で働いている。初枝には少ないながらも年金がある。それでも足りない分を万引きしているようだ。ただ、犯罪へのハードルはかなり低い。これまでの人生が透けて見えるようだ。
この「家族」のつながりには、何か秘密がある。物語が進むにつれて、その秘密が徐々に明らかになってゆく。
食卓を囲む「家族」は仲がよく、笑いが絶えない。カップラーメンとコロッケの夕食が妙に美味しそうだ。
でも、この「幸せ」はいつまで続くのだろうか。綱渡りのような不安感がいつも漂っている。
「誰も知らない」でも評価されたように、是枝監督は子どもを撮るのがうまい。オーディションで選ばれたという城桧吏(祥太)と佐々木みゆ(ゆり)の演技も自然で、ドキュメンタリーを見ているように、演技のようには見えない。
リリー・フランキー(治)、安藤サクラ(信代)、樹木希林(初枝)、松岡茉優(亜紀)ら大人の俳優が演じる場面も印象に残るものばかり。
音楽の名盤と呼ばれるアルバムには捨て曲がない。それと同じように、どの場面も無駄がなく、よく練られている。
特にラスト近くの安藤サクラの涙。ここ数年で観た映画の中で、最も心に残るシーンだった。
【戸田 照朗】
監督・脚本・編集=是枝裕和/音楽=細野晴臣/出演=リリー・フランキー、安藤サクラ、松岡茉優、池松壮亮、城桧吏、佐々木みゆ、緒形直人、森口瑤子、山田裕貴、片山萌美、柄本明、高良健吾、池脇千鶴、樹木希林/2018年、日本
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