チューニング 2019年2月24日

 

 

 

 2月は私立大学の受験シーズンである。この季節になると懐かしさと切なさで、なんとも複雑な思いがする▼私は高校卒業後、福岡の予備校に通った。「親不孝通り」のどん詰まりにその予備校はあった。通りの両脇は飲み屋も多く、だれ言うこともなく、この名前がついたという。予備校の寮に入り、必死に勉強したが、浪人1年目の春は全敗に終わった▼1浪してどこも受からないというのは、さすがにへこむ。とはいえ、他に選択肢はない。2年目に入るとダレてきて成績が落ちるという人も少なくないが、私は変わらず努力した▼そして2年目の春。東京に行く前にある関西の大学を受けた。福岡で受けられたので、予行演習のつもり。滑り止めだった。東京に着いてすぐ結果が分かったが、不合格。今年もなのか…。私は東京に来てすぐに受けた大学の合格発表を見に行ったが、近視でよく見えなかったことにして、確認しないで帰ってきてしまった▼1年早く東京に来ていた弟のアパートに泊まっていた。その大学に受かっていたことを知ったのは母からの電話。受けたのは弟だった。「兄ちゃんは、親孝行をした。オレはあんなにおふくろを喜ばせたことがない」。電話の向こうで興奮する母の声はなかなか聴きとれなかったという。

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