新松戸「北限ぎりぎりレモン」
住宅街にレモン畑 都市型農業で地産地消
松戸の農産物というと、二十世紀梨に始まる梨の栽培や矢切ねぎ、あじさいねぎ、樋野口覆下(ひのくちおおいした)小かぶ、などが有名。そのほかに、枝豆、イチゴ、小松菜、キャベツ、大根、ほうれん草、トマト、にんじん、なども作られている。最近は新松戸でレモンが栽培されているという。生産しているのは、横須賀の農家、鵜殿敏弘さん一家(鵜殿シトラスファーム)。昨年9月に柑橘(かんきつ)類直売所「MONPE(もんぺ)」を新松戸駅前通り(新松戸6-16)に開店した。敏弘さん(66)と妻の優子さん、息子の崇史(たかふみ)さん(36)がレモンを栽培し、弟の芳行さん(60)がMONPEでの販売を担当している。【戸田 照朗】
新松戸地区は江戸時代の新田開発により一面の水田が広がっていたが、1960年代から始まる土地区画整理事業で宅地化した。鵜殿敏弘さん(66)の家では父・亘さんの強い希望もあって畑作農家として続けることになった。敏弘さんは蘭や、ブロッコリー、そら豆、トマトなどを栽培していたが、連作障害で同じ場所で同じ作物を作ると収穫量が減ってきた。場所を変えたり、土を入れ替えるのも手間と資金がかかる。敏弘さんの弟の芳行さんが経営していた花屋で売れ残ったレモンの木を畑に植えてみたところ、実がなり、松戸でもレモンが育つことを知ったため、10年前から本格的にレモン栽培を始めた。
1964年の輸入自由化の影響で、国内市場のレモンはほとんどが米国産とチリ産になった。しかし、国産レモンの収穫量も徐々に回復し、2014年には1万トンの大台を超えた。輸入が約5万トンであるため、国産が6分の1を占めていることになる。
レモンはもともと温暖な気候を好む。収穫量は広島県が6割、愛媛県が2割で、「瀬戸内レモン」が全体の8割を占めている。
敏弘さんは、「松戸は生産できる地域として(北限)ぎりぎりですね。『瀬戸内レモン』に対して『ぎりぎりレモン』だなんて言っています」と笑う。
鵜殿家の畑は、新松戸の住宅街の中に8か所が点在している。広いところで400坪、狭いところで120坪。レモンを栽培しているのは主に3か所で、500本。1つの畑で半分の木が、寒さで枯れてしまったことがあるという。木は4~5年経てば枯れなくなるが、若い木は枯れることがある。土地のちょっとした高低差や風の向きなども影響するらしい。温暖化と住宅街の暖かさなどはむしろ生育には好条件。しかし、北風が吹き込む方向に住宅があるかないかなど、微妙な違いが影響する。産地の瀬戸内とは気候が異なるため、参考にはできない。木と木の間をどのくらい空けるのが最適かなど、手探りの試行錯誤は今も続いている。
鵜殿家が作るレモンはマイヤーレモンという種類で、オレンジがかった色と、薄い皮が特徴で、果汁がたっぷり絞れる。出荷時期は9月の下旬から2月まで。ただ今年は売れ行きが良く、残念ながら1月中で売り切れたとのこと。レモンの木は1年中花をつけるが、出荷できるのは春に花がついた実。夏以降に花が咲いても、実が成熟するまでに寒くなってしまい、売り物にならないのだという。
レモンの木は収穫できるようになるまでに3~4年、本格的に収穫できるようになるまで10年かかるという。出荷をはじめて4年。今年は3トンを出荷した。木が成長したあとは15トンを目標に出荷したいという。小さいもので1個50円、大きいもので1個150円ほど。
輸入レモンは輸送時に防カビ剤などが塗られるが、国産は防カビ剤やワックスが塗られない。鵜殿家でも、防カビ剤やワックスが塗られていない、より安全・安心なレモンを販売している。
ほかに甘夏、はるみ(みかん)などの柑橘類も栽培し、MONPEで販売している。いずれも12月ごろに収穫し、1~2か月貯蔵する。糖度は変わらないが、酸味が抜けることで、より甘味が増したように感じ、美味しくなるという。
まだ出荷には至っていないが、ライムの木も植えている。
鵜殿家の柑橘類は、赤坂のヒルズマルシェや、ららぽーと柏の葉店、ららぽーと新三郷店などの中にある「わくわく広場」(直売所)でも販売している。
問い合わせは、☎047・713・0146まで。午前10時~午後5時。月曜定休。