日曜日に観たいこの1本
ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目覚め
実話をもとにした映画。シカゴでコメディアンを目指しているパキスタン人のクメイルはタクシーの運転手として生計を立てながら、スタンダップ・コメディを見せるバーの舞台に立っていた。クメイルは客として来ていた大学院生のエミリーと知り合い、交際が始まる。
クメイルの両親はアメリカに移民して豊かな生活を送っていた。週末には郊外にある両親の豪邸に行き、食事を共にする。そこへ、母親が密かに呼んだ若い女性が偶然を装って現れる。実はパキスタンではほとんどがお見合い結婚。偶然を装って現れた女性は、母親が用意したお見合い相手なのだ。アメリカに移民したパキスタン人の家庭では、パキスタンの伝統を守って生活している。クメイルがパキスタン人の女性と結婚して、パキスタン人として家庭を築くことが両親の一番の願いなのだ。しかし、アメリカで育ったクメイルには、その生き方がどうしても受け入れられない。イスラム教徒だが、礼拝も適当にサボっている。もし、クメイルが白人の女性と付き合っていることが両親に知られたら大変なことになってしまう。白人の女性と結婚した従兄弟は親から勘当され、親兄弟や親戚との関係を絶たれてしまった。
そんなことは知らないエミリーは、いずれ両親にも紹介してもらえるものと思っている。
優柔不断な態度をとり続けるクメイルの手元にはお見合い相手の写真の束が残されるばかり。その写真の束をエミリーが発見してしまう。険悪になるふたりの関係。だが、しばらくして入ったのは、エミリーが原因不明の病気で昏睡状態になったという知らせだった…。
人種とか宗教とか、実は重い背景がありながら、実に軽やかなラブコメディーとして描かれている。
エミリーが昏睡状態に入ってからは、看病をするエミリーの両親との関係が描かれる。
9・11同時多発テロ以降は、イスラム教徒というだけで差別を受けることも。そんな様子が作品の端々に見えてくる。でも、エミリーの両親は少し違うようだ。最初は娘を傷つけたクメイルに冷たい態度をとっていたが、エミリーの看病を通して心を通わせてゆく姿に心がほっこりと温かくなる。
クメイル役は実際にこの出来事を体験した本人が演じている。エミリー役のゾーイ・カザンは美人ではないがチャーミングでかわいい。エミリーの母親を演じたホリー・ハンターがいい味を出している。 【戸田 照朗】
監督=マイケル・ショウォルター/出演=クメイル・ナンジアニ、ゾーイ・カザン、ホリー・ハンター、レイ・ロマノ、アヌパム・カー、ゼノビア・シャロフ、アディール・アクタル、ボー・バーナム/2017年、アメリカ
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「ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目覚め」、2018年9月4日発売、税抜3800円(税込4104円)、発売元・販売元=ギャガ