日曜日に観たいこの1本
ちはやふるー結びー
前から気になっていた作品だが、今回完結編となる「結び」が出たので、「上の句」(1作目)、「下の句」(2作目)も借りて一気に見た。
「ちはやふる」は、末次由紀原作の漫画。アニメもあるが、映画は「タイヨウのうた」などを手がけた小泉徳宏が監督・脚本を務めている。
私は原作も読んだことがないので予備知識は全くなかった。百人一首を使った競技かるたを舞台にした青春映画である。
「上の句」「下の句」では、高校生になった主人公の綾瀬千早(広瀬すず)が、仲間を集めてかるた部を創部し、東京都予選を勝ち抜いて全国大会に出場するまでの1年間が描かれる。小学校の時、競技かるたを教えてくれたのは永世名人を祖父に持つ同級生の綿谷新(あらた・新田真剣佑)だった。千早と新、そしていつも一緒に遊んでいた真島太一(野村周平)は3人でチームを作り、大会にも出場した。その時のチーム名が「ちはやふる」だ。新は家の事情で遠くの町に引っ越してしまったが、千早には、いつかまた、3人でかるたをとりたいという強い願いがあった。
千早が創部した都立瑞沢高校かるた部には、太一のほかに、小学生時代には全国2位(1位は新)になったことがある実力者、「肉まんくん」こと西田優征(矢本悠馬)、ガリ勉タイプの「机くん」こと駒野勉(森永悠希)、呉服屋の娘で日本文化と古典をこよなく愛する大江奏(上白石萌音)が入部。駒野と大江はかるた初心者である。
競技かるたの団体戦は5人で行われる。3勝以上した方が勝ち。瑞沢高校かるた部は5人しかいないので、1人でも欠場したら試合ができない。その上2人が初心者。人数的にもドラマが生まれやすい構造になっている。「畳の上の格闘技」とも形容される競技かるたは激しいスポーツのようだ。初心者2人に教えるという形で、競技かるたのルールなど、基本的な知識が自然に紹介される。
同じ東京都の強豪・北央学園かるた部や、史上最年少でクイーンとなった若宮詩暢(しのぶ・松岡茉優)などのライバルが現れ、瑞沢かるた部や千早と競うことになる。
主人公は千早なのだが、実は太一の物語のようにも感じる。
新は千早に淡い想いを抱いている。太一も千早のことが好きなのだが、その想いはより強いように感じる。太一は中学受験をして私立の進学校に進んだのに、高校はわざわざ千早のいる都立高校を選んだ。そのことからも、千早への想いの強さが感じられる。
新と千早はどこか似ている。脇目も振らずに真っ直ぐに競技かるたに向き合い、どこか天才的な才能を秘めている。相手に対する気持ちも真っ直ぐだ。ただ、千早は恋愛には鈍感でモデルの姉を持つ美少女なのに「無駄美人」と呼ばれている。
太一の成績は学年で1番(2番は駒野)で、東大の医学部を目指している。でも、成績もかるたの実力も人一倍努力を重ねて得たもの。特にかるたは、千早と一緒にいたいから続けてきたのかもしれない。新と千早が持っている「真っ直ぐなところ」に憧れと劣等感にも似たモヤモヤした気持ちがある。これが物語を通してずっと切ない。
「結び」ではこの部分がさらに強調されているように感じた。
3年生になった太一は、あることをきっかけに、かるた部を辞めてしまう。表向きは「受験生だから」ということで。
かるた部の1年生には経験者で生意気な筑波秋博(佐野勇斗)、恋愛体質で太一に憧れている初心者の花野菫(優希美青)が入部。
2人増えたことで大会には出場できるが、ずっと千早を支えてきた太一はもういない。千早はどうするだろうか。
かるた部を辞めた太一だったが、予備校の教壇に立つ無敵の若き名人、周防久志(賀来賢人)と再会。太一は自分を見つけられるだろうか。
一時かるたを止めていた新は、千早や太一に触発されて、自分の高校でかるた部を創り、全国大会出場を目指す。「いつかまた3人でかるたを」という千早の夢は叶うだろうか。
「結び」は2年時を飛ばして3年から始まるので、初見ではわかりにくいところもあった。2年時の短いエピソード5話とメイキングからなる「繋ぐ」(宣伝用にテレビで放送されたのかな?)もDVDが出ているので、先にこちらを見てから「結び」を見たほうがわかりやすくなるかも知れない。
【戸田 照朗】
監督・脚本=小泉徳宏/出演=広瀬すず、新田真剣佑、野村周平、矢本悠馬、森永悠希、上白石萌音、松岡茉優、佐野勇斗、優希美青、賀来賢人、清原果耶、清水尋也、坂口涼太郎、松田美由紀、國村隼/2018年、日本
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「ちはやふる│結び│」通常版、ブルーレイ&DVDセット発売中、税別3500円、発売・販売元=東宝