日曜日に観たいこの1本
ゲット・アウト

 

 

 

 

 ニューヨークで暮らすアフリカ系アメリカ人のクリスは白人の彼女ローズの実家に招待された。ローズに自分が黒人だということを両親に話したかと聞くと、まだ話していないという。両親は人種差別的な人ではなく、父などはオバマに三期目があれば必ず投票すると話しているような、リベラルな人だから大丈夫だという。それでも若干の不安を抱きながら彼女の実家に着いたクリスをローズの両親は歓待してくれた。しかし、2人の黒人の使用人がいたことに妙な違和感を覚える。この2人の使用人がどこか不気味だ。
 翌日、亡くなったローズの祖父を讃えるパーティーに多くの友人が集まった。ほぼ白人だけの集団の中に一人だけ黒人を見つけ、クリスは声をかけるが、彼もどこかおかしい。2人の使用人と同じような違和感を感じる。
 この作品はミステリー、あるいはホラーに分類されると思う。気味が悪く、怖くて、面白かった。ストーリーについては、ほんの触りだけを書いた。できるだけ何も知らずに見たほうが楽しめると思う。
 主人公のクリスが感じている違和感や不気味さがどこから来ているのか。この謎が明らかになるくだりはミステリーだと思う。
 ホラーに人種差別問題を絡めたところがこの作品のミソだと思う。ホラーといっても、超常現象や怪物が出てくるわけではない。怪物は人間の心の中に住んでいる。
 監督と脚本はアメリカの人気コメディアン、ジョーダン・ピール。低予算の初監督作品でアカデミー賞脚本賞を受賞した。
 DVDには監督の本編音声解説がついていたので、本編鑑賞後に改めて解説付きで観た。サスペンスとしての多くの伏線。黒人である監督が今までに経験してきたことを踏まえて書いた脚本。直接の差別表現ではなくても言葉の選び方や喋り方から感じる差別は、英語を母国語としない私には分からないところだ。そして、監督がリスペクトする様々な映画作品へのオマージュも散りばめられていた。
 少し気になったのは、ローズの亡くなった祖父を讃えるパーティーに一人だけ日本人がいたということ。解説では、日本人の俳優を探すのが大変だったということしか話していなかったが、逆に言えば、わざわざ日本人を探してキャスティングしたということ。そこにどんな意味があったのだろうか。
【戸田 照朗】
 監督・脚本・製作=ジョーダン・ピール/出演=ダニエル・カルーヤ、アリソン・ウィリアムズ、ブラッドリー・ウィットフォード、ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ/2017年、アメリカ
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 『ゲット・アウト』、4K ULTRA HD+Blu-rayセット税別5990円、ブルーレイ+DVDセット税別3990円、発売元=NBCユニバーサル・エンターテイメント

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