国指定名勝 旧徳川昭武庭園を復元
古写真、文字記録をもとに調査
6月より公開

復元された書院造庭園

 平成27年3月に国の名勝に指定された旧徳川昭武庭園が復元され、6月1日から一般公開される。市は28年から復元工事を開始し、2年をかけて今年3月に完了した。同庭園は、戸定邸に接して南に広がる書院造庭園と隣接する福島県学生寮跡地に新しく復元された東屋庭園の2つの区画に分けられる。戸定邸は最後の水戸藩主となった徳川昭武が隠居後に暮らした邸宅。復元により昭武の作庭の意図や、庭への思いもうかがい知ることができる。古写真や文字記録をもとに調査し、できる限り当時の姿に近づけられた。木の種類の判定では、残された株の細胞を調べて確認したものもあるという。調査は千葉大園芸学部の藤井英二郎名誉教授が指導した。【戸田 照朗】

 

市民から寄贈されたコウヤマキ

 東屋庭園は6月1日から一般公開(無料)。また、書院造庭園は現在も戸定邸(要入館料)から眺めることができるが、6月から建物から書院造庭園に降りられる「戸定の日」が復活する。6月は10日、20日、30日の予定。また7月1日まで戸定歴史館展示室(要入館料)で復元の根拠となった古写真や文字記録などを展示している。
 書院造庭園では、明治時代には存在しなかった樹木や樹形が崩れたものを撤去、移植し、明治時代に存在していた樹木を補植した。当初存在していた飛び石を復元し、存在していなかった飛び石は撤去された。また、園路を復元。書院造庭園の芝生面を10㎝下げて、作庭当時の高さにした。東屋庭園は地形、東屋、植栽を復元した。
捕植、または移植した樹木が明治時代の巨木の姿に育つまでには数十年かかるため、今後計画的な育成管理を行うという。
 2年に及ぶ工事を通じて、この庭園はわが国現存最古の洋風庭園であることが明らかになったという。明治時代には書院造庭園東側から南へ8本のコウヤマキが連なっており、4本が現存していた。今回4本が補植され、数十年の後には巨木の木立ちが復元される。このうちの南側の1本のコウヤマキ(樹高約10m)は公募により市民から寄贈されたものだという。かつて、この場所には最も立派なコウヤマキが植えられていたが、落雷により失われてしまった。

復元されたコウヤマキの木立

 昭武は太く枝振りの優れたアオギリを探し出し、戸定邸西側の崖に面して10本の木立ちをつくった。移植位置、樹形は古写真から割り出された。アオギリの後ろにツツジとサツキが連なるが、専門家により、樹齢2~300年と推定された。
 福島県学生寮跡地に復元された東屋庭園の南方向に緩やかな斜面が続く。地形復元により、自然の造形が巧みに活かされていることが明らかになった。コウヤマキの巨木はこの斜面を引き上げられ、移植されたのではないかという。8本のうちの1本は、明治19年11月に柏市花野井から運ばれ、160人の人手で引き上げられたという記録も残っている。

復元された東屋

 東屋は庭園西側の崖に面している。古写真によると東屋の4本の柱のうち北側の2本は節のある柱が使われている。これも関係者の協力によって、類似のものが探された。ここからは25mの標高とは思えない高さを実感できるという。空気が澄んでいれば、東屋や戸定邸表座敷からも富士山が見られる。戸定邸西側崖の木々も明治時代にはもっと低く、松戸の街や小山の浅間神社の極相林(県指定天然記念物)、江戸川も一望できたという。

復元された東屋庭園

 入館時間は午前9時30分~午後4時30分(5時閉館)。公園は午前9時~午後5時。月曜休館(休日祝日の場合は開館し、その翌日休館)。入館料は5月30日までは、歴史館・戸定邸共通入館料一般240円、戸定邸のみは150円。6月1日からは歴史館・戸定邸共通入館料一般320円、戸定邸のみは250円。

 

 

 

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