チューニング 2018年4月22日
大学のサークルに入った頃、先輩たちが「伝統あるサークル」と言っていたのを聞いて違和感を覚えた▼サークルができてまだ10年。できてはつぶれるサークルが多い中で、大学が郊外に移転してからずっと存続していることが誇らしかったのだろうか。11月には創立40周年の記念パーティが開かれる。ここまで来れば、「伝統」と言えるだろうか▼大相撲の地方巡業で人命救助のために土俵に上がった女性看護師が土俵を降りるようにアナウンスされたことが物議をかもしている▼聞くところによると、大相撲で女性を土俵に上げなくなったのは、明治時代になってからのことだという。私たちが伝統だと思い込んでいることの中には、意外と江戸時代や明治時代にできたものが多く、日本の歴史の中では比較的新しい▼明治の初期には政府が神仏分離令を出したために、拡大解釈した民衆によって国宝級の貴重な寺院建築や仏像が破壊されるという非常に残念な事件が起こった(廃仏毀釈運動)。6世紀に大陸から仏教が伝えられて以来、日本人は神仏習合という形で、上手に神も仏も崇(あが)めてきた▼むしろこの時点では、神仏習合といった、あいまいで緩やかな多神教的な考え方の方が日本人らしい「伝統」だったのではないだろうか。