日曜日に観たいこの1本
ボブという名の猫 幸せのハイタッチ
書店で「ボブという名のストリート・キャット」という原作の本を目にしていたが未読だった。実話に基づく物語で、出演している猫はボブ本人だという。
ミュージシャンを目指しているジェームズはどん底の生活を送っていた。家もなく路上生活。路上に立って歌い小銭を稼ぐが、足りなくてゴミ箱をあさる毎日。両親の離婚が原因なのか、10代から薬物中毒。同じロンドンに住む父は、新しい家族を作り、彼を敬遠している。ジェームズはなんとか立ち直ろうともがき、何度目かの更生プログラムに挑戦し、代替薬を処方してもらっているが、外に出れば、ホームレス仲間が薬を勧めてくる。薬物中毒者の寿命は短い。彼も肝炎を発症していて、今度薬に手を出せば、命が危ない。彼の更生プログラムを担当している女性ヴァル(市の職員?)は、最後のチャンスかもしれないと思い、上司に無理を言って彼に住居を用意した。
久しぶりに人間らしい生活ができると喜ぶジェームズ。そこへ一匹の茶トラの猫(後にボブと命名)が迷いこんできた。ゴロゴロとのどを鳴らしてとても人懐っこく、毛並みもきれいだ。どこかに飼い主がいるのでは、と近所を訪ねてまわるが、見つからない。ジェームズが路上演奏から帰ってくると、ボブがドアの前に。ケンカでもしたのか、ケガをしている。お金のないジェームズはボランティアの病院(動物福祉病院)にボブを連れていくが、薬は有料で、持っているお金を全て使ってしまった。
翌日、ジェームズが路上演奏に行こうとすると、ボブがついてくる。最初は追い払おうとしたが、バスの中までついてきてしまい、結局、ボブを連れて路上に立つことに。すると、ボブのかわいらしさにつられて、彼の前には多くの客が集まるようになった。
同じアパートに住む動物愛護家で菜食主義者の女性ベティとも仲良くなって、ジェームズの生活にもやっと潤いが出てきた。
すべてボブが運んできてくれた幸運のように見える。
しかし本当は、自分のことだけで精いっぱいだったジェームズに、ボブという守るべき存在ができたことが一番大きかったのだと思う。お金を稼がなくては、ボブまで飢えさせてしまう。
路上でボブを肩に乗せ、ビッグイシュー(路上生活者支援のための雑誌)を売っていたジェームズに子どもを連れた金持ち風の女が、「その猫はうちで生活したほうが幸せだから、買い取る」と言い出す。ボブは売り物ではないと拒むが、女はしつこい。そこでジェームズは、「かわりに、その子を自分に売るか」と女に聞く。女は激怒する。
ジェームズにとってボブはもう大切な家族、子どものようなものなのだ。
ジェームズはボブという最愛の相棒を得て、様々な困難に立ち向かっていくことになる。
【戸田 照朗】
監督=ロジャー・スポティスウッド/出演=ルーク・トレッダウェイ、ジョアンヌ・フロガット、 ルタ・ゲドミンタス、アンソニー・ヘッド、ボブ(猫)/2016年、イギリス
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「ボブという名の猫 幸せのハイタッチ」、発売元=コムストック・グループ、販売元=ポニーキャニオン、価格=DVD税別3800円(本体)、ブルーレイ税別4700円(本体)